プラトンとアリストテレス(ミメーシス)芸術理論・西洋篇

 古代ギリシアを代表する哲学者のひとりであるプラトン(前427~前347)は、詩人および芸術は、たんに目に見える表層だけを模倣していると厳しく批判し「模倣とは何か」問うことから始まる論考を著作『国家』第十巻の「詩人追放論」[註1]において提示している。プラトンに学んだ古代ギリシアの哲学者アリストテレス(前384~前322)は、このプラトンの批判を退いて芸術を救いだしたのである。彼は著作『詩学』[註2]において、ギリシア悲劇を含むミメーシス(模倣術)の諸相を観察と分類からはじめ、芸術作品の価値を模倣を理由に下げることはせず、芸術作品を「模倣」の概念により説明している。

 プラトンはまず「模倣とは何か」問うことから始め、例として寝椅子があげられる、それには三つの種類があることが明らかにされる。神が作った寝椅子のイデア、大工職人が作った普段使用する寝椅子、画家が描いた寝椅子、その論考のなかで画家の作品は下位である三番目に位置される。画家は事物の見かけだけを模倣しているにすぎない、しかし作品が真実を描き出しているかのような、無知な人間を欺くことが模倣者である画家の非難されるべき所似である。詩人も画家と同様であると提示している、プラトンのこの考えである芸術活動の本質を、オリジナルに対する模倣と捉える考え方は見方によっては芸術の独自性を浮き彫りにさせ、自然模倣としてとらえた芸術理論に通底する考察ともいえるのである。

 「技術は自然を模倣する」という言葉はアリストテレスが最初に発した言葉とされている。悲劇もまた人々にいかにもありそうな行為を模倣することを本質としている。また狭義の技術も自然を模倣する。「一般に技術は、一方で自然の成し遂げないことを完成させるが、他方で自然のなすことを模倣する」と提示している。アリストテレスは『詩学』において芸術作品はどうあるべきかを問題にし、個々の作品の美をあくまでも作品のありかたにおいて明らかにしようとした。芸術作品を模倣の概念により説明され、詩のいちジャンルである悲劇を主題として取り上げ、それを行為の模倣ないし再現とみなす。ここでいう行為とは実際に起こったことではなく、起こりうること起こってしかるべきことである。それも聴衆に憐れみや恐れの感情を引き起こすような再現が悲劇なのであり。歴史家がおこったことに語るのに対して、詩人はおこりうることを語るという点に関して「詩作は歴史にくらべてより哲学的であり、より深い意義をもつものである」という有名な言葉を残し起こりうることの再現という点で普遍的なものに関わっているからであると提示し詩作・芸術を高く評価したのである。

 これらふたつの論考は、芸術活動の本質をオリジナルに対する模倣と捉えさらにこの考えは。芸術活動の独自性を浮き彫りにさせ西洋の自然模倣、ミメーシス(模倣術)としてとらえた芸術理論の基軸となる論考になるのである。

参考文献、

小田部胤久『西洋美学史』東京大学出版会、2009年
酒井紀幸、山本恵子『美学』大学教育出版、2009年

編者、加藤哲弘『芸術理論古典文献アンソロジー 西洋篇』京都造形芸術大学、東北芸術工科大学、出版局、芸術学舎、2014年、註1(佐藤真理恵、『国家』プラトン、第1章、11ページ) 註2(若林雅哉、『詩学』アリストテレス、第2章、19ページ)