被写界深度とブレの表現(写真表現)

 カメラは絞りとシャッタースピードのふたつの機構で光の量、露光量を調整して撮影している。絞りは通過する光の量を、シャッタースピードは光の時間を制限している。このふたつの機構は、写真の写りにかかわる被写界深度とブレに影響があるのだ。

 カメラの絞りはレンズの中にあり、通過する光の量を調整している。絞り値はFで表示され、数値が小さいほど開口部が大きく光の量が多くなり、数値が大きいほど開口部が小さく光の量が少なくなるのだ。1を基準として√2をかけた数値の列が絞りの基本となり光の量は1/2になり、逆は2倍となりこの1ステップを1段という。絞りの数値を大きくすることを絞るといい、小さくすることを開けるという、各レンズの最小の絞り値のことを開放と呼ぶ。また、カメラは普段遮光されていて撮影時に時間を調整して光を取り入れる機構がシャッターである。1秒を基準とし半分で1/2秒、倍で2秒となり、この1ステップを1段といい二つの機構の組み合わせで適正露出の調整をする。

1/500秒
1/125秒
1/30秒

 風車をシャッタースピード1/500秒、1/125秒、1/30秒と設定を変え撮影、1/500秒では静止している風車の羽は1/125秒では少しブレて1/30秒では羽の形がわからないほどブレて風車の羽の動きの速さを表現している。また、絞りを開放・F8・F16に設定して撮影したテーブル上の四つの林檎の写真では、開放では被写界深度は浅く後方の林檎はボケている、F8では被写界深度は深くなり四つの林檎の全体が確認できる、F16では被写界深度はさらに深くなり、四つの林檎のほぼ全体の形を正確に見ることができるのだ。

 f2 開放
f8
f16

 カメラは絞りとシャッタースピードのふたつの機構で露光量を調整して撮影している。絞りはレンズ内部にあり通過する光の量を、シャッタースピードは光の時間を制限している。この二つの機構によって変わる被写界深度とブレによる写真の表情は、写真表現に関わる重要な機構であることを伝えているのである。

参考文献、情報デザインシリーズ Vol.2 『写真の変容と拡張』京都造形芸術大学、1999年、