アガペーを中心道徳に据えた教え (新約聖書 キリスト教)

 紀元前1世紀後半、律法主義に立つユダヤ教の中に、神の福音を宣教したのがイエスである。彼にとって神は愛の神である、それはアガペーと表現される他者を生かす無差別、無償の愛であり、この教えと行為は、さまざまな人々に福音として深い慰めと希望を与え、さらにキリスト教となり世界宗教として民族を超えて人々の心に訴えたのである。

 預言者ヨハネに洗礼を受けたのち、ガリラヤ地方で伝道活動を始めたナザレのイエスはエルサレムにはいり、当時の祭祀階級と形式化した信仰を批判したため、人々を扇動する反逆者としてとらえられ、十字架の刑に処せられた。

 紀元前1世紀後半、当時のユダヤ教パリサイ派の律法学者たちの律法の厳格な遵守は、形式主義による多くの人々の差別をうみだした。このような時代に神の福音を宣教したのがイエスである。彼にとって神は愛の神である、それはアガペーと表現される他者を生かす無差別、無償の愛である。愛により人間を生かす神が人間に命じるのは、神への愛と隣人愛であることを伝え、さらに「敵を愛し、迫害する者のために祈れ」と語り、隣人愛が仲間内の愛を越えなければならないと説いて、愛の原理を道徳の中心に据えたのである。

 イエスの死後ペテロたちはエルサレムを中心に宣教活動を展開これがキリスト教の始まりである。パリサイ派に属しキリスト教会の信徒に対する、ユダヤ教による迫害の先頭に立つユダヤ人のパウロは、劇的な回心を体験し一転してユダヤ人以外の諸民族に対するキリスト教伝道の先頭に立つ『新約聖書』は彼の手紙を多数含む。彼はイエスの十字架の死を人類の贖いの死として信じることにより、人間は義とされ救われるのであると説き、罪なきイエスの代理贖罪の思想を語り、信仰と希望と愛をもってこの世に生きることを伝えたのである。

 イエスにとって神は愛の神である、それはアガペーと表現される他者を生かす無差別、無償の愛であり、その教えと行為は、さまざまな人々に福音として深い慰めと希望を与え、さらにキリスト教として世界宗教となり民族を超えて人々の心に訴えたのである。

参考文献、 岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』岩波ジュニア新書、2003年