ピクトリアリズムに対するストレート写真

 1839年に正式に公開された写真という技術は、さまざまな領域で活用された。十九世紀の終わり頃から、絵画を模倣する写真の運動「絵画主義・ピクトリアリズム写真」が流行する。二十世紀にはいると写真独自の表現を重んじる運動、鮮鋭なフォーカスで印画に手を加えない「ストレート写真」の美学が追求されたのである。

 十九世紀の終わり頃から、写真を芸術のジャンルとして形成していこうとする動きがあり、絵画を模倣する。ゴム印画法、ブロムオイル法などのピグメント印画法のような手工芸的なやり方をする絵画模倣の「絵画主義・ピクトリアリズム写真」が各国のアマチュアたちの間で大流行する。ロベール・ドマシー(1859~1936)はほとんど写真とは見えないような画面操作を行った作品をつくりあげる。

 アメリカのアルフレッド・スティーグリッツ(1864~1946)は、1902年に「フォト・セセッション」という運動を、1905年には「291ギャラリー」と呼ばれる、写真だけではなく。同時代のヨーロッパの前衛芸術の作品も展示され、同期した新たなかたちの「写真芸術」を提唱することになる。鮮鋭なフォーカスで印画に手を加えないストレート写真の美学、絵画の模倣ではなく、写真メディアの独自性を追及してゆくのだ。1924年、画家ジョージア・オキーフをモデルに雲を主題とする内面世界の象徴的な表現である「等価物」などは、スティーグリッツの写真家はたんなる記録者や技術者ではなく、表現者であり、自己の内面を視覚表現する姿勢が写真家の『作品』であることを物語っている。

このような、ストレート写真の美学は

エドワード・ウェストン(1886~1958)などにも受け継がれたのだ。

 十九世紀の終わり頃から、絵画を模倣する写真の運動「絵画主義・ピクトリアリズム写真」が流行した。二十世紀、写真メディアの独自性を、自己批判を通じて追及していく態度、鮮鋭なフォーカスで印画に手を加えない「ストレート写真」の美学が追求され、同時代の抽象絵画などのモダニズム芸術とも共通する、これが写真におけるモダニズムとされるのである。

参考文献、 飯沢耕太郎『写真的思考』株式会社河出書房新社・2009年 
『写真の変容と拡張』京都造形芸術大学・1999年 、編者・林洋子『芸術教養シリーズ8 近現代の芸術史 造形篇2 アジア・アフリカと新しい潮流』京都造形芸術大学 東北芸術工科大学 出版局・芸術学舎、2013年、