シンディ・シャーマン(1954~)は、1977年頃から引用による表現の試みを徹底させた
「アンタイトルド・フィルム・スティル」のシリーズを開始する、
作品の中で仮想現実的な扮装による自己を表現している。
シャーマンの作品は、現代の情報メディアが社会に浸透し、
人間の相貌的知覚の影響を表現された、現実意識としての自己の内面を写真で表現している作品と考えられ。
拡張されたセルフ・ポートレイトという手法の可能性を彼女の作品の中に見ることが出来るのである。
シンディ・シャーマンの「構成された写真」という芸術
シンディ・シャーマンは、アメリカ合衆国ニュージャージー州に生まれ、ニューヨーク州立大学バッファロー校で美術を学ぶのである。
1977年から79年に制作された「アンタイトルド・フィルム・スティール」のシリーズは、
1979年にバッファローで初めて公開され、翌年ニューヨークのメトロ・ピクチャー・ギャラリーでも展示され話題になったのだ。
シャーマンは、作品の中で記憶の中の映画やテレビなどのヒロインに変身し、その姿を撮影する引用によるパフォーマンスの試みを徹底するのである。
形式的にはセルフポートレイトには違いないが、唯一の自己イメージを求める伝統的な概念を解体するものであった。
メディア・イメージの浸透によって無限に変貌してゆく多重人格としても捉えられている。
近年の作品では奇形、怪物、死者、など人間存在のグロテスクな暗部を隠喩的に表現しているのだ。
仮想現実的な扮装による自己の内面を表現している彼女の作品は、
現代の情報メディアが社会に浸透し、人間の相貌的知覚に影響をあたえた現実意識としての視覚表現とも考えられるのだ。
この作品から現代社会の人間像として、ポストモダニズム写真が表現する大衆が共有可能な芸術の可能性を感じるのである。
参考文献、宮本隆司、八角聡仁『写真芸術論』京都造形芸術大学、2003年、 ・情報デザインシリーズ Vol.2 『写真の変容と拡張』京都造形芸術大学、1999年、・飯沢耕太郎、河出ブックス008『写真的思考』2009年、・ジェフリー・バッチェン『写真のアルケオロジー』前川修/佐藤守弘/岩城覚久 訳 青 弓社 2010年