二十世紀の前衛文学の最先端の作家として位置するホルヘ・ルイス・ボルヘス (1899~1986) は、その作品内に円環、無限、鏡、迷宮、など人間の認識した世界を超越する、作品内にひとつの幻惑的な宇宙を描く詩人、作家である。
彼の才能と独創性は世界で称賛され1950年代後半から国際的な広がりをもち多くの言語で翻訳されている。
前衛文学の作家ホルヘ・ルイス・ボルヘス
ホルヘ・ルイス・ボルヘスは1899年ブエノス・アイレスに生まれた。有名な軍人や政治家を生んだアルゼンチンの名家ボルヘス家の御曹司にふさわしく、彼は若い頃からヨーロッパに渡り、スイス、フランス、スペイン、イギリスなどで教育と前衛文学の洗礼を受けた。
二十二歳の時故郷アルゼンチンの前衛文学運動に参加して詩集『ブエノスアイレスの狂熱』を発表する。
三十代半ば過ぎからの『伝奇集』と『エル・アレフ』が絶頂を極める作品として1950年後半から彼の名声が国際的な拡がりをもち、ヨーロッパの批評界から現存する最も重要な作家と見做される。また、多くの言語で訳されて世界で称賛を浴びたのである。
短編小説作品「不死の人」を例に挙げれば、それはホメロスの叙事詩の物語の中に入り迷路を彷徨う、断片的な物語の映像記憶の歪、物語を継ぎあわせた現実世界と夢の創造の世界、多くの物語が導く想像の世界を成分として新たに創造された物語であり、宇宙という自然の秩序を擬人化した神の世界を描く物語として想起させる、迷路を彷徨う人間の生そのものを普遍的に表現している。
60年代に入って小説集の『ブローディーの報告書』『砂の本』の二冊を発表、1974年には一冊本の『全集』を刊行し、初期の三冊のエッセー集をのぞき、他の全作品を、千ページをこえる大冊本のなかに収めている。
二十世紀の前衛文学の最先端の作家として位置するホルヘ・ルイス・ボルヘスは作品内にひとつの幻惑的な宇宙を描く詩人、作家である。
彼の才能と独創性は世界で称賛され1950年代後半から国際的な広がりを持ち多くの言語で翻訳されている。彼の作品は、迷路を彷徨う人間の生の現実意識の表現としての普遍性を物語に描いているのである。
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参考文献、
ホルヘ・ルイス・ ボルヘス『詩という仕事について』、岩波文庫、2011年
ホルヘ・ルイス・ボルヘス/篠田一士訳『伝奇衆/エル・アレフ』、グーテンベルク21、2017年
ホルヘ・ルイス・ボルヘス/柳瀬尚紀訳『ボルヘス怪奇譚集』、河出書房新社、2018年
ホルヘ・ルイス・ボルヘス/野谷文昭訳『七つの夜』、岩波書店、2018年
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『詩という仕事について』普遍的な生の表現。(文芸)宇宙図書館の住人、ホルヘ・ルイス・ボルヘス(文芸)