論述で大切なのは「問う」という考察である、その「問い」に他者と共有可能な言葉で答える行為である。
目次
はじめに
「問い」が知的な広がりを与えるかどうか、吟味と考察をして日ごろから問題意識を持ち、対象をどう言葉でとらえるか、訓練することである。
「見立ての力」対象を既知のものと比較してその新しさに気づく能力、既知のものと未知のものの構造の類似性を見取る能力が必要なのだ。これらが論述に必要な考え方である。
本編
読者を巻き込んで、創造的な連鎖反応を起こす考察が必要であり、論述で大切なことは問いに沿って、自分なりの考察を展開しながら答えに近づくことである。
自分の論のオリジナリティを、他と区別するために、あるいは自分の述べていることの論拠として、ほかの文献を引用したり示す必要がある。
文献を探す、本探しの達人になること、玉石混淆の中から、ふさわしい資料を選び出す目利きななること。論述するとき重要になるのは「私」の対象への思いではなく、あくまで対象の持っている性質である。
その性質を私がどう見出したか、オリジナルな考察が必要であり、その過程と内容を書くべきである。
不特定多数の読者にも共有される、普遍性のある共有可能な言葉で論じるべきで、他人が書いた文章の表現を、丸写しするような行為は剽窃として厳しく批判される。
論述の基本構成は「序論・本論・結論」であり。流れをもって、中心となる考えを、ダイナミックに変化させながら書くことが必要とされる。刻々と変わる自分を、校正者、他者の目として利用し、必ず自分の文章を読み直し書き直すこと、即ち、推敲することが重要である。
まとめ
論述の思考法と形式、技法は、問題意識を持つことロジカルに考えること、共有可能な言葉を探すこと、こうした考え方やものの見方が、習慣づけられることなのだ。
論述を学ぶことは処世術を学ぶことであり、またこれは論述に必要な考え方であるといえるのである。
参考文献
参考文献:篠原学(著)、大辻都(編)『アートとしての論述入門』京都造形大学、東北芸術工科大学、出版局、芸術学舎、2018年