「ポップアート」にみる、民衆の声


民衆の詩歌を編纂した孔子の『詩経』が芸術理論であるという事が、民衆の生の声、大衆の文化が芸術であることを伝えています。

一方、アリストテレスは『詩学』のなかで、プラトンの詩歌に対する批判的な言葉を退く虚構的な物語のなかにある普遍性を多くの民衆が共有可能であることが描かれるとして称揚しています。

このふたつは東洋と西洋の芸術理論と据えられています。


「ポップアート」にみる、民衆の声


「ポップアート」の代表的な芸術家、ロイ・リキテンスタインとアンディ・ウォーホルはコミックや映画、その他、印刷された複製技術から生み出された表現を芸術と、それまでの観念的、概念に対しての変更を促しました。

これが「現代アート」であることを受け入れたとき自身の芸術に対しての考え方は揺らぐのです。

芸術とは優れた人間の手による技芸、もしくは高尚な造形の世界と考えていたことが、その時代の民衆の声である大衆文化が芸術というわけです。

さらに機械技芸、機械によって生み出される半ば自律的な表現が現代の大衆文化、アートであると表現されています。


「ポップアート」と識別された芸術は、固定観念への変更を促すことに有効な、芸術のもつひとつの力として、 思想の黎明期である古代の芸術理論と通底する、流転する 現代社会の大衆文化を投影し表現していると感じ取ることができるのです。


Amazon購入ページ 参考文献

佐々木健一『美学への招待』 増補版 中央公論新社 2019年