論述の文章は、発信の前に受信があり受信への応答という性格を強く持っている。
知のネットワークに接続し、ふさわしい文献を探し出すことで論述における見立ての力、問いやテーマを見出すのだ。
さらに自分の論述の中に、参考文献を「引用」することで自分の文章の中に、他者の視点を持ち込むことができるのである。
その文献のなかのある部分を、もとにして自分の議論を展開させ論述に他者と共有可能な質を与えることにつながるのだ。
参考文献から広がる知識(論述基礎)
論述の記述に沿った文献は自分で探し大事なことは、面白そうな参考文献を読んでみること、最も効率的なことは一冊の本を通して読むことなのだ。
著者の思考に任せることで、その分野に精通することにつながり、素晴らしい眺望が得られるのである。
さらに論述の「例証」「反証」というレトリック等を使い、参考文献を使用し自分自身の文章に「引用」することで、具体例の助けを借りて、何かを証明する事につながるのだ。
また、参考文献の「引用」は他者性を持ち込むことになり、文章に客観的な質を与えてくれる。
ここで注意すべき事として、あくまで自分の議論を主軸におくこと「引用」のルールを守ることであり、さらに参考文献の具体例は、あくまでそれを補助するためを目的とすることである。
このように、参考文献を使用することで自分自身の議論を、高みに導くことが可能になるのだ。
参考文献は、文章を読むことで自らに問いかけ、このとき論理的な論述が始まる。
さらに「引用」として、自分の文章に組み入れることで文章に客観的な質を与え議論に高みをもたらせるのだ。
参考文献との対話は哲学的な思考と、新しい知見を生み出し自身の論述を他者と共有可能で高尚な文章へと導いてくれるのである。
参考文献:篠原学(著)、大辻都(編)『アートとしての論述入門』京都造形大学、東北芸術工科大学、出版局、芸術学舎、2018年