西洋文化の源(ヨーロッパ芸術史)

 ギリシア文化は、ロゴスとミュトス、理性と神話の相互関係による明晰な言語表現という発想がみられ、デモクラティアから来たデモクラシーやキリスト教の新約聖書がギリシア語であること。古代ギリシア文化との接触で始まった古代ローマ文学を含め、ギリシア・ローマの文学と思想はヨーロッパ文学の出発点となり、また西洋文化の源である。

 ギリシアの神々と英雄伝説の神話は、作者とされるホメロスの叙事詩としてトロイア戦争の終盤と英雄の漂流譚が伝えられた、前7世紀タレスから始まる哲学は、アルケーの規定をめざす自然哲学から世界像の相対性を主張するソフィストを批判したソクラテスとプラトンにより、人間の営みを支える究極の根拠としてのイデアに関心を向き換えた。

三大詩人によるギリシア悲劇はギリシア神話から題材をとり複雑な心理描写を物語にしアリストテレスが『詩学』のなかで論じたのだ。古代ローマの文学は紀元前3世紀頃、古代ギリシア文化との接触で始まり、フマニタスという独自の世界観は個人と社会をつなげる思想を獲得、大思想家で政治にもかかわるキケロやセネカが活躍、ローマ帝国の反逆者として処刑されたイエス・キリスト、その弟子たちの伝道で信者数を拡大し各地に教会とあわせキリスト教が成立、新約聖書はギリシア語で記されている。中世キリスト教信仰に基づく神学と古代ギリシア哲学とを統合したスコラ哲学が発達、教会の典礼から宗教劇が発展、騎士道文学が生まれる。

 ギリシア・ローマ古典世界を取り込み中世文化の到達点、新しい時代の出発点ともいえるダンテの長編詩、ペトラルカに始まる人文主義は14世紀半ばに発展し国際化するのだ。

 ローマ教皇の教会からのグレゴリオ聖歌はポリフォニー音楽へ発展、民衆たちの生活から巡礼の音楽、楽譜印刷により複雑化したルネサンス時代の音楽は国境や文化の違いを越えた作曲家の登場につながる。16世紀フランスではユマニスト、人文主義者の文芸を中心としたルネサンス芸術が花開きモンテーニュが自己を描写した作品を生みだす。イギリスでは演劇が開花し劇作家シェイクスピアの作品はルネサンス文化の到達点であり現代文学の出発点である。17世紀フランス語の規則を守るためのアカデミー・フランセーズが創設され、演劇で三一致の法則が重視される、17世紀終わり国立劇団コメディ・フランセーズ設立。フランスの哲学者デカルトとパスカルが近代の扉を押し開く。ヨーロッパ最初の近代小説と考えられる『ドン・キホーテ』18世紀イギリスで本格的に近代小説が登場ノヴェルと呼ばれ。装飾性を特徴とするバロック音楽、17世紀初頭オペラやオラトリオ誕生、ヴァイオリン等の弦楽器、調性音楽の確立など、後の音楽史の礎となる。17世紀イギリスで啓蒙思想が始まり国家の正当性、抵抗権の主張、懐疑論を唱え、フランスでは三権分立や百科全書派などが啓蒙思想の運動として広がり、ドイツでは哲学の著作がドイツ語で書かれるようになり啓蒙思想家が活躍した。

 明晰な言語表現という発想がみられるギリシア・ローマの文学と思想は、ヨーロッパ文学の出発点となり、また西洋文化の源である。

参考文献、編者、中村亮二、西洋芸術史 文学上演篇Ⅰ『神々の世界から市民社会の幕開けまで』京都造形芸術大学 東北芸術工科大学 出版局 芸術学舎 2014年

プラトンとアリストテレス・ミメーシス(芸術理論) 現代人の原型、ギリシアの思想(ギリシアの思想) 古代ギリシア哲学、アリストテレスの思想(ギリシアの思想)